3/3生産技術セミナー第1回―②(低剛性(多関節)汎用小型ロボットによる精密ドリル穴あけ加工)
中部航空宇宙産業技術センター(C-ASTEC)
C-ASTEC生産技術セミナー第1回3月3日講演②-解説
(低剛性(多関節)汎用小型ロボットによる精密ドリル穴あけ加工)
C-ASTECでは、既報の通り3月3日に生産技術セミナー第1回を開催します。東海国立大学機構・航空宇宙生産技術開発センターは、「生産技術」に焦点を当てた研究開発機関として、航空機産業の製造面の課題を解決することを目的としています。今回は3月3日の講演②として、航空宇宙生産技術開発センターの伊藤和晃教授にご講演いただく「低剛性小型ロボットによるドリル穴あけ」について解説します。
(低剛性小型ロボットによるドリル穴あけ解説)
航空機の構造組み立てにおいては、ほとんどすべての部材結合においてリベット、ボルトなどの機械的ファスナ結合が用いられ、溶接は用いられません。これは航空機が高度に軽量化設計されているためで、主要材料であるアルミ合金が熱影響を受けやすいことと、溶接に比べて機械結合の方が強度・信頼性に優れているためです。
また航空機は、部材が薄板の外板やフレームで構成された、セミモノコック構造となっており、単品の部品は薄く柔軟で容易に変形してしまうが、一旦箱型に組みあがると大きな強度と剛性を発揮するようになります。一般の機械等では組立ファスナと取り付け穴には余裕を持たせる場合が多いですが、穴に余裕があると航空機構造に限界まで荷重を加えた場合、ファスナの摩擦力以上の荷重が加わると部材間の滑りが起こり、構造全体としての強度が発揮できなくなるため、ファスナの取り付け穴は精密に穴径を加工する必要があり、結合される部材同士の穴位置は一致している必要があります。このため部品を治具上にセットした状態で複数部品を貫通する穴をあける必要があり、ほとんどの場合、各部品に事前に穴あけしておくことはできません。
民間航空機の連続生産の外板パネルの組み立てにおいては、大型の治具と門型の移動台をもつ自動ドリル・リベット機が使われていますが、これは部品ごとの専用機であり、非常に高価で移設もできません。その他の多くの構造部品や連続生産でない機種では、ほとんどが人間の手でドリル穴あけが行われています。部材は薄く柔軟なため、ドリルに加える加工力によって部材や治具がたわんだりずれたりすると正確な穴があけられず、これまで剛性の低い多関節型産業ロボットでは人間のような正確な作業はできませんでした。
本研究では高精度な力制御を可能とするエンドエフェクタを独自開発しました。力センサを使うことなくツール先端の加工力を高精度に制御し、ロボットの軌跡制御性能が十分でなくとも熟練者のような微妙な力加減を再現させることで高精度な加工ができます。航空機構造部品の穴あけの他、曲面が多い複雑形状部品のバリ取り、接着剤刷毛塗り等、高精度と微妙な力加減を必要とする工程の自動化が可能となります。
C-ASTEC生産技術セミナー第1回
日時:3月3日 13:15~15:55
場所:ウインクあいち1208号室(名古屋駅から徒歩5分)
募集人数:28人(申込み先着順)
参加費:C-ASTEC会員企業無料、非会員企業3000円
申込期限:2月24日まで
講演内容:
(1)「ジョブショップ型生産工程シミュレータ及びハニカムパネルの打音自動検査」
○岐阜大学工学部 電気電子・情報工学科 情報コース 教授
○航空宇宙生産技術開発センター 教授
横田 康成 工学博士
(概要)超多品種生産のためのジョブショップ型生産工程シミュレータは、欠品のリスクを下げつつ在庫量を最小化するオーダー計画を自動的に作成し、計画変更や外乱が発生した時には最適な介入方法を導出します。またハニカムパネルの接着欠陥や損傷の検査において用いられる打音検査は検査員の聴覚などに頼ったものですが、打音のデータ解析により自動欠陥検知ができるようになりました。
(2)「低剛性小型ロボットによるドリル穴あけ」
○岐阜大学工学部 機械工学科 知能機械コース 教授
○航空宇宙生産技術開発センター 教授
伊藤 和晃 工学博士
(概要)航空機構造組み立てにおけるドリル加工は熟練を要する作業ですが、高精度に加工力を制御するエンドエフェクタを装備することで熟練者のような力加減を実現し、航空機構造の小物組立品の精密なドリル加工や、複雑な機械加工製品のバリ取りなどを、低剛性(多関節)ロボットで行うことができます。
主催:一般社団法人 中部航空宇宙産業技術センター(C-ASTEC)
担当者:技術情報部長 誉田隆志(こんだたかし)
お申込み先:e-mail:seminar@c-astec.jp
Tel:052-221-6681
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