top of page

一般社団法人中部航空宇宙産業技術センター

3/3生産技術セミナー第1回―①(リードタイム15%短縮・仕掛り在庫低減・ボトルネック工程明確化)


中部航空宇宙産業技術センター(C-ASTEC)

C-ASTEC生産技術セミナー第1回3月3日講演①-解説

(リードタイム15%短縮・仕掛り在庫低減・ボトルネック工程明確化)


C-ASTECでは、既報の通り3月3日に生産技術セミナー第1回を開催します。東海国立大学機構・航空宇宙生産技術開発センターは、「生産技術」に焦点を当てた研究開発機関として、航空機産業の製造面の課題を解決することを目的としています。今回は3月3日の講演①として、航空宇宙生産技術開発センターの横田康成教授にご講演いただく「ジョブショップ型生産工程シミュレータ及びハニカムパネルの打音自動検査」について解説します。


(ジョブショップ型生産工程シミュレータ解説)

航空機部品の製造においては、部品が超多品種・少量生産であることは知られています。このため特定の設備や技能者に同じ部品を連続して生産させることはできず、多種類の部品を混流生産し、各部品はそれぞれの命令書に従って複数のショップを経由して完成する、ジョブショップ型生産工程が構成されます。

各部品の完成までに取り得る経路は単純なものではなく、類似の設備であってもその能力・稼働状況などによって、複数の経路を取り得る場合があります。一つの部品を生産するために必要なリードタイムは各工程の必要時間の合計だけでなく、生産順序、ロットサイズ、輸送時間、作業待ち、段取り変え、機械の稼働率など様々な要素があり、不適切な生産計画はリードタイムの長期化や仕掛り在庫の増加の原因となります。また計画変更・材料欠品や不具合発生などの外乱発生時、余裕が足りないと一部の緊急作業による割り込みが玉突きを起こし、生産混乱に陥って多数の欠品が発生することがあります。

数百のジョブショップに同時に数十万点の仕掛品が流れる工場では、従来の工程シミュレータでは膨大な計算時間を要するため最適な生産計画を解くことができず、人間の知識と経験によって生産計画を行ってきました。計画の立案や日々の進捗管理には多数の人員と熟練が必要とされてきました。単一工程の外注加工の工場では、この複雑な工場のジョブショップの一つを担っていることになりますが、一貫生産受注を目指す場合、工程種類が増加するとともに、同様の複雑な生産計画の問題に直面することになります。

「ジョブショップ型生産工程シミュレータ」は、航空宇宙生産技術開発センターと川崎重工業(株)航空宇宙システムカンパニーの共同研究によってできました。このシミュレータの構築には、データサイエンス的アプローチにより数理的モデルを駆使した解析を行いました。シミュレータは、欠品(=納期割れ)のリスクを最小限に抑えつつ、準最適な命令発行の計画を作成します。また外乱発生時には影響が最小となるロット組み換え、追加部品生産などの介入方法の計画を作成します。従来のシミュレータでは、組み合わせ数が多すぎて対応できなかったり膨大な計算時間が必要だった大規模工場の生産計画についても、PCで数時間程度で結果を割り出すことができます。

本シミュレータを利用することにより、リードタイムの短縮、工程間在庫・完成在庫の適正化、トラブル対応の迅速化、ボトルネック工程の明確化などの効果があります。大規模工場の場合では、従来に比べて15%ものリードタイム短縮、仕掛り在庫低減の効果が見込まれます。


(打音自動検査の解説)

航空機のフェアリングなどでは軽量なハニカムパネルが多く使われています。ハニカムパネルは薄い金属や複合材料の面板をハニカム・コア(ハチの巣状の部材)の両面に接着したものです。

ハニカムパネルの打音検査は、「タッピング検査」「コイン・タッピング」と呼ばれる検査で、ハニカムパネルの薄い面板とその裏打ちであるハニカム・コアの間の接着はがれやコアのつぶれを検査するものです。薄い面板は単体では剛性が低いため、表面を叩いたとき鈍い音がしますが、コアが接着されていると甲高い音がします。

ハニカムパネルの非破壊検査では、表裏両側に超音波を通して検査する透過型超音波探傷検査では自動機械を使いますが、装置は大型であり、ハニカムパネルを機体に付けたままでは検査できず、表裏どちらの接着面に欠陥があるかの判定はできません。反射型超音波探傷では、面板材料とハニカム・コアの境目からは大きな反射波があるため、境目にある接着不良の判定は困難です。X線検査では、コアの破損、水滴などの異物は分かりますが、接着の良し悪しは判別できません。

このため、航空機ハニカムパネルの検査では、打音検査が多用されます。しかし打音検査は検査者のタッピング技術・聴覚・経験則などに依存するため、属人性が高くばらつきが大きい、検査者の身体的負荷が大きいといった問題があります。

本研究では、打音のデータ解析による自動欠陥探知を可能にするため、欠陥推定に学習を2重に回す新しいサイエンス的アプローチを考案し、欠陥検知法を確立しました。これにより小型ロボットアームなどを用いて自動タッピング計測を行い、データ取得、解析、表示、確認までの一連の打音検査の自動化システムを構築することが可能となります。


C-ASTEC生産技術セミナー第1回

日時:3月3日 13:15~15:55

場所:ウインクあいち1208号室(名古屋駅から徒歩5分)

募集人数:28人(申込み先着順)

参加費:C-ASTEC会員企業無料、非会員企業3000円

申込期限:2月24日まで

講演内容:

(1)「ジョブショップ型生産工程シミュレータ及びハニカムパネルの打音自動検査」

○岐阜大学工学部 電気電子・情報工学科 情報コース 教授

○航空宇宙生産技術開発センター 教授

 横田 康成 工学博士

(概要)超多品種生産のためのジョブショップ型生産工程シミュレータは、欠品のリスクを下げつつ在庫量を最小化するオーダー計画を自動的に作成し、計画変更や外乱が発生した時には最適な介入方法を導出します。またハニカムパネルの接着欠陥や損傷の検査において用いられる打音検査は検査員の聴覚などに頼ったものですが、打音のデータ解析により自動欠陥検知ができるようになりました。


(2)「低剛性小型ロボットによるドリル穴あけ」

○岐阜大学工学部 機械工学科 知能機械コース 教授

○航空宇宙生産技術開発センター 教授

 伊藤 和晃 工学博士

(概要)航空機構造組み立てにおけるドリル加工は熟練を要する作業ですが、高精度に加工力を制御するエンドエフェクタを装備することで熟練者のような力加減を実現し、航空機構造の小物組立品の精密なドリル加工や、複雑な機械加工製品のバリ取りなどを、低剛性(多関節)ロボットで行うことができます。


主催:一般社団法人 中部航空宇宙産業技術センター(C-ASTEC)

担当者:技術情報部長 誉田隆志(こんだたかし)

お申込み先:e-mail:seminar@c-astec.jp

Tel:052-221-6681

過去の記事
フォローしてください
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square

Copyright(c) 2018 C-ASTEC. All rights reserved.

bottom of page